病院で働いていると(介護系施設でも同じだと思いますが。。。)、
- ナースコールを押しても人が来ない
- 声かけたくても看護師さんが近くにいない
- 病状説明とか滅多にしてくれない
など、結構な頻度として声を聞く機会があります。
今日は、この事について、やや現場寄りの視点で解説していきたいと思います。
というのも近年の傾向として、「こっちは金払ってるんだから、すぐ来い!」「私の家族だけ○○して欲しい」「〜くらい、いいじゃん」など無茶苦茶な要求をしてくる患者さんや家族が増えてきたな〜という印象がある為です。
※金払ってるとか、言われても。。。
「病院は保険診療で自費支払い分以外は、保険料支払ってる皆さんのお金から出てるんだよな」とか、「あなたの求めているは、全額自費でスタッフを個別に雇ってくれないと絶対にできない事だよね」とか心で思っていても、笑顔で対応していますが。。。
こういった患者さん・家族からの訴えに対して、多かれ少なかれ心身をすり減らしている現場スタッフの現場をお伝えします。
病院と患者さん、どちらが偉いとかは無く良い関係が築ければいいなと思うのですが、多分お互いの立場がわからない為に一方が強気になる事も起こり得ると思いますので、今回解説していきます。
そもそも病院の人員配置基準とは?
日本の病院は国民皆保険制度により、基本的には日本全国どの病院でも同じ医療行為であれば、同じ費用・同じ自己負担額で診療を受けることができます。
当然、人の配置や施設の基準などについて制度で基準が定められ、一定水準を満たすことが必要となります。この事により、どこでも同水準の医療が受けられる仕組みとなっています。
では、人の配置はどうでしょうか?
これは、ホームページや病院入口付近に掲示してある「施設基準」という所をみるとわかります。「人員配置基準」という様にも載っている病院・施設もあります。
そこには、
- 看護配置 7:1 (若しくは10:1、13:1など)
- 看護補助配置 20:1 など
という様に記載してあるのが、人の配置状況の手厚さを表している数字です。
看護配置○対△って、なに?
看護師さんの配置は、患者さん○名に対して、△名ですよという事です。
例えば看護配置13:1の場合は、患者さん13人につき看護師さんが1人がいますよと言えます。これを多いと捉えるか?少ないと捉えるか?どちらでしょうか?
もう少し、具体的にしていきます。
例)最大52人(床)入院できる病棟で、看護配置13:1の場合
- 最大52人÷患者さん13人=看護師さん4人
- 4人×3(1日24を看護師さん1人当たり8時間勤務=3)=12
- ※1日24時間の中で、12人の看護師さんが勤務する
実際には、この12人の看護師さんを日中勤務と夜間勤務に振り分けて、勤務を行います。
細かな申し送り等は省いて、ざっくりと以下に例を挙げます。
- 日中勤務 9:00ー17:00 8人体制
- 夜間勤務 17:00ー9:00 2人体制(交代あり合計4名)
この様な体制で勤務表を作成している病院もあるのではないでしょうか?
実際例のように勤務したらどんな感じ?
何となく、例を見ていると夕方・夜間って大変そうなイメージがお分かりになると思います。ざっくりとした、スケジュール例を挙げてみます。
- 9:00ー10:00 52人分の検温チェック・おむつ交換・点滴
- 10:00ー11:00 主治医回診・カンファレンス
- 11:00ー12:00 予定入院患者さん対応
- 12:00ー13:30 患者さんの食事準備と介助(交代で休憩)
- 14:00ー15:30 お風呂介助(午前中の場合もある)
- 15:30ー16:30 52人分の検温・おむつ交換・各種書類・カルテ記入
- 16:30ー17:00 申し送り
- 17:00ー18:00 検温・患者さん状態確認
- 18:00ー19:00 患者さん夕食準備・介助
- 19:00ー20:00 カルテ入力など
- ・・・・
- 6:00ー8:00 患者さん朝食準備・介助
- 8:00ー9:00 カルテ入力・申し送り
どうしても、朝・昼・夕の食事の時間帯はかなりスタッフが手薄になります。特に朝・夕は2人しかいない中で52人分の食事準備から介助を行いながら、食事後は排泄しやすいのでトイレの介助などを行います。この中で、あちこちからナースコールが鳴り、面会に来たご家族さんから話しかけられます。
日中にしても、おむつ交換やら処置やらお風呂介助やらトイレ介助やら。。。時間が目まぐるしく過ぎていきます。緊急入院や急変があった場合にはより過酷な状況に置かれます。
この中で、「金払ってるんだ」とか「〜くらい、いいじゃん」は、結構厳しいということをご理解いただければ幸いです。
看護師さんの職場はいわゆるブラックな環境に置かれてしまう事が多く、ミス=人の死という大きなプレッシャーの中に身を置いております。
患者さんの病状についての個別性について細心の注意を払いながら、病院での過ごしやすさの個別性を現場で応えるには、限界があります。
私は今は事務方ですが、現場の皆さまには、本当に頭が下がります。
おわりに
今回は、現場の状況について、温度感強めに解説しました。
医療現場の接遇は、一般からは大きく遅れていると言われておりますが、ただ何も知らないで批判をするだけではなく、まずは現場を知っていただければありがたいです。
患者さん・ご家族に対して不親切なのは、主には運営側の責任であって、現場のスタッフは本当に頑張っています。※もちろん中にはロクでもないスタッフもおりますが、、、
今回の記事が、患者さん側と病院側の相互理解についての一助になれば嬉しいです。
記事が良いなと思っていただけたら、フォロー・シェアしてくれたら嬉しいです。今後も医療・介護の情報をできるだけ堅苦しくなく、ざっくりと発信していきたいと思います。